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環境レッドブック「海岸浸食を考える」

回りをぐるりと海で取り囲まれている島国、日本。
総延長35,000kmにも及ぶ海岸線は、サンゴ礁海岸、砂(礫)浜海岸、磯と呼ばれる岩礁海岸のほかに、干潟、流氷海岸など多様性に富む自然環境がある。最近の研究で、日本近海の生物種数は3万3,629種、世界の25海域の中で最も多様性に富んでいることがわかった。

絶滅危惧種アカウミガメの産卵場所のひとつ、種子島中山海岸もまた海岸侵食によって砂が流失している。原因はまだ分かっていないが、写真手前には漁港と川の河口があり、突堤や堤防工事が行われており、その影響も考えられる。それと大きな波によって削られた土砂がさらに海岸を狭くしている。今年もまた中山海岸にはアカウミガメが産卵に訪れているが、産み落とされた卵が波によって流失しないかウミガメの保護団体のボランティアは監視を続けている。海岸侵食が続く限り、自然の摂理に任せるか、人間の手を加えるのか悩ましい選択が迫られている。

容積では全海洋の1%に過ぎない日本近海に全海洋生物種の約15%が生息しており、流氷が張る北海道からサンゴ礁が広がる沖縄まで海辺の自然環境の多彩さが日本近海の多様性を育んでいる。
また、それらの海岸は、本来、津波や台風時における波浪にたいして防御壁的な役割を果たしている。砂浜は、寄せる波の大きさに応じて広くなったり狭くなったりしながら背後域を守る緩衝機能を備えている。

このように島国・日本にはなくてはならない海岸が、毎年、侵食によって1.6平方kmも失われている。日本の海岸侵食研究の第一人者、(財)土木研究センターの工学博士・宇多高明氏によると、海岸侵食は日本全国ほとんどの地域で起きている深刻な現象だと言う。
海岸侵食のメカニズムは簡単だ。たとえば、砂浜の端に漁港を造るために大きな防波堤を造る。防波堤は波を静かにさせる目的だから、そこに砂が溜る。防波堤によって溜った分だけ、どこかで砂が減っている。つまり、人的不作為によって海岸侵食が引き起こされている。そして、川から砂が供給されなくなって海岸侵食が進行しているケースも多い。「その原因はダムだという意見もあるが、もっと大きな問題は砂利採取。ある川ではその川が作り出す100年分の砂利を掘り出してしまった」。ダム建設や砂利採取によって川本来の機能が失われたことがもう一つの原因だと、宇多高明氏は分析している。

海岸浸食を考える

ある川では、堤防工事のために溜った砂を掘り出し、谷に埋めてしまった事例もある。砂ができるまでには長い年月を必要としており、砂資源は世界的にも枯渇傾向にある。砂は貴重な資源であり、財産であることを共有する必要があるようだ。従来の護岸工事は、微妙な環境条件下で育成する海浜植生やウミガメの産卵地の喪失を招き、本来海岸が有する自然環境に大きな影響を及ぼすばかりではなく、造成地としての印象も否めず海辺の景観をも破壊している。

「養浜は成功事例が増えている。新しい養浜の考え方は、景観を汚すテトラポットや防波堤の設置は止め、最小限の工事にとどめる。砂が溜ったら、減った場所に砂を戻す。一番大きな原理は、人間は自然に立ち向かうなということ」と宇多高明氏はアドバイスをおくる。
種子島中山海岸の海岸侵食(撮影:久米満春)絶滅危惧種アカウミガメの産卵場所のひとつ、種子島中山海岸もまた海岸侵食によって砂が流失している。原因はまだ分かっていないが、写真手前には漁港と川の河口があり、突堤や堤防工事が行われており、その影響も考えられる。それと大きな波によって削られた土砂がさらに海岸を狭くしている。今年もまた中山海岸にはアカウミガメが産卵に訪れているが、産み落とされた卵が波によって流失しないかウミガメの保護団体のボランティアは監視を続けている。海岸侵食が続く限り、自然の摂理に任せるか、人間の手を加えるのか悩ましい選択が迫られている。

相模川〜辻堂  ( 航空写真 )

相模川河口の航空写真(写真:財団法人土木研究センター提供)相模川では年間14万立方メートルの土砂が川から流れてきていた。関東唯一といえるほどの砂の流出量で、きめ細かな上質の砂のために広大な河口テラスができていた(1954年の航空写真参照)。

現在ではその土砂はほとんど流れてこなくなり、河口テラスも消滅した(2005年の航空写真参照)。原因のひとつが土砂採取と上流のダム建設。東京オリンピックが開催された1964年の1年間だけで日本全国で 2億5,900万トンの川砂利が採取されてしまった。

相模川から砂が供給されないために柳島から茅ヶ崎にかけて海岸侵食が進んでしまった。(航空写真提供:神奈川県)

相模川〜辻堂  ( 航空写真 )

相模川〜辻堂  ( 現地写真 )

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