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EARTHマガジン(アースマガジン)|特集「Beautiful Islands(ビューティフル・アイランズ)」監督 海南友子インタビュー

ビューティフルアイランズオフィシャルサイトへ

映画「ビューティフルアイランズ」監督:海南智子さん

アースマガジン(以下EM):この映画では是枝さん(※)がエグゼクティブ・プロデューサーですね。

海南友子(以下海南):彼とは20年来の友人です。私が学生のとき、彼はまだテレビ・ディレクターで、彼の番組に出演したことがきっかけで知りあい、それ以来ずっと仲良くお付き合いさせていただいています。

EM:是枝さんはどういう形でこの映画に関わったのですか?

海南:ディレクターは私なので、私の作品をどういうふうに世の中に出していくとか、作っていく途中でアドバイスをいただきました。

EM:具体的には?

海南: 3年半かけ世界を3周して撮った作品なので、その度にいろいろ取材先の要素の話とか、編集段階ではかなり来ていただいて、アドバイスをもらいました。

※是枝裕和 (これえだ ひろかず)映画監督・テレビ・ディレクター 1962年、東京生まれ。1987年に早稲田大学第一文学部文芸学科卒業後、テレビマンユニオンに参加。主にドキュメンタリー番組を演出、現在に至る。1995年に「幻の光」で映画監督デビュー、主な作品は「ワンダフル・ライフ」(1997)、「誰も知らない」(2004)では主演の柳楽優弥がカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞、初の時代劇「花よりもなほ」(2006)、「歩いても 歩いても」(2008)、「空気人形」(2009)など。

EM:シナリオを書かれてから撮影を開始するのですか?

海南:ドキュメンタリーは事前のリサーチを大量にして、どういうシーンが撮れるのかをある程度想定して、はじめます。下調べを100して、撮影をするのは20、そのなかで使うのは1といった具合です。100に当たる部分というのは、調べたり、現地に行って人に会って話を聞いたりといった取材をしてきて、そのうち20では、どこを撮るとかを想定して決めてスケジュールを組んでいって撮影します。それから、撮ってきたものを編集する段階で、予想していたものと撮ってきたものが違っていたり、また、予想していた以上のものが撮影できたりしていますので、そのなかから編集で使用する映像を決めていきます。今回は編集に1年かけました。

EM:ツバルは最初から撮影することを決めていたのですか?

海南:もともと2002年に南米のチリにある南極に近いパタゴニアの氷河を取材していて、氷河が崩れるのを目のあたりにして、初めて足下が崩れる感覚を味わったことが、この企画のスタートなんです。それから本格的にこのプロジェクトをはじめたのが2006年なので、その間、準備と構想だけで4年間ありました。最初から島を考えていたわけではなくて、氷河が衝撃的だったので、氷河にしても良かったし、中央アジアの砂漠化の話しとかいろいろ考えていたのですが、やはり温暖化によって一番影響を受けている島ということで、島で行こうということになりました。

で、島を軸にすると、どの島がいいかということになり、ツバルを選びました。ツバルだけでも充分作品になるほど素材はたくさんあったのですが、ツバルだけで作ると、皆さん、名前だけは聞いたことがあるけど、場所も雰囲気もあまりよく知らないと思うんですよ。それで、ベネチアみたいな世界遺産の代表格を入れ、またアラスカのような寒いところで氷が溶けている場所も入れ、気候も風土も人種も異なる場所を取り上げ、気候変動が世界同時多発で起きていることを描こうと思いました。

EM:話しは変わりますが、海南さんはダイビングが趣味なんですね。海との関わりは?

海南:運動が全然できない子どもだったんですけど、NHKに入社して九州に転勤になったんです。最初はやだなと思っていたのですが、海も山も近くてすごく楽しい場所だったんです。それで、会社から半日休暇をもらって、ダイビングの免許を取りました。それから、もともと沖縄が好きだったので、仕事と遊びを兼ねて沖縄で潜ったり、タイのピピ島なども何回か行きました。

沖縄の慶良間が一番良かったですね。3年半かけたこの映画が終わって一番最初に行ったのが慶良間です。まだ公開も配給先も決まっていないのに(笑)。ツバルでも潜りたくなって、ダイビングできませんかって聞いたら、漁師さんなら道具を持っているけど、貸してくれるようなところはないよって言われました。

EM:ツバルでは、家族が美しくハーモニーを付けて歌っているのに驚かされました。

海南:毎日、晩ご飯の時に家族で歌うんですよ。歌う歌もその家の長老の方、おじいちゃんとかおばあちゃんが、今日は何を歌うって決めるんです。

EM:映画のなかで歌っていたのは?

海南:あの時は私たちが来ていたので、歓迎の歌を歌っていました。キリスト教由来の賛美歌系の歌を歌っている場合もあるし、土着の歌も残っているのですが、どこまでが土着の歌かはもう分からなくなっていました。

EM:歌詞は英語でしたか?

海南:ツバル語でしたね。学校では英語で教えていますが、ツバル語も半々に使われています。よくも悪くもアクセスの悪い島ですし、テレビも新聞もないので、昔の風習がしっかり残っています。

EM:国としても国連に加盟している。

海南:温暖化の国際会議には必ず参加していますし、ツバルを選んだ一番大きい理由は、たとえば日本でいうと淡路島だけ沈んでしまうとか沖縄だけなくなっちゃうんじゃなくて、一番高いところが標高5メートルしかないのですが、そのツバルという国が全部沈んでしまうというところにあります。

EM:小さい島では簡単に1周できるし全てが見えます。

海南:そうなんです。シシマレフでは、地球みたいだなと思いました。ゴミの捨て場所に困っていたりとか人口が増えすぎてきていて大変だったりとか、なにか小さい地球みたいだなって思いました。

EM:どういうスケジュールで動いたんですか?

海南:まず最初にツバルに行って、その後、ベネチアにそれぞれ1ヶ月ほどいました。それで、行けるという当りをつけて、それぞれの島をまわってロケしました。

EM:撮影チームの構成は?

海南:ディレクターとカメラマンと音声に、アシスタントの4人、プラス、スチールのカメランでした。

EM:最後に、この映画「ビューティフル アイランズ」の見どころを教えてください。

海南:海面上昇による被害パートは映画全体の2割ぐらいしかないんですよ、いわゆる悲しいところは。他は、踊りであったり食生活、あるいは信仰とか、今そこにある暮らしぶりを撮っているんです。なぜかというと、戦争のときも災害のときも、私たちは、起きた後の失われた世界しか見ていなくて、実際、本当はそこに何があったのかということを分かって見ると、失ったものの大きさを初めて感じることができると思うんですよね。これから消えようとしている美しい世界を見つめた上で、なにを殺そうとしているのか、なにを失おうとしているのか、それを受け止めてもらいたいということです。

EM:ありがとうございました。

なみある?EARTHアワード2010授賞式典での海南さん。
社会が抱える課題に真正面から向き合うジャーナリズム、その取材姿勢から生まれる作品もまた、私たちの未来にとってきわめて貴重である。

プロフィール
海南友子(かな ともこ)
1971年、東京都生まれ。日本女子大学在籍中に、是枝裕和氏のテレビ・ドキュメンタリーに出演したことがきっかけで映像の世界へ。卒業後、NHKの報道ディレクターとしてNHKスペシャルなどで環境問題の番組を制作。2000年に独立。『にがい涙の大地から』(2004)で黒田清日本ジャーナリスト会議新人賞を受賞。2007年劇映画のシナリオ『川べりのふたり(仮)』でサンダンスNHK国際映像作家賞を受賞。2010年7月には、氏が監督・プロデュースし、気候変動をテーマに世界の3つの島(ツバル/ベネチア/アラスカ?シシマレフ島)を描いたドキュメンタリー映画『ビューティフル アイランズ』が日・米・韓ロードショー公開され、米映画批評誌『Variety』紙に絶賛されるなど話題を呼ぶ。環境問題はライフワークで、学生時代には植林などの活動や地球サミット(1992年)のプロセスに参加。ごみゼロナビゲーションで知られるASEEDJAPANの立ち上げメンバー。著者に「BEAUTIFUL ISLANDS」(角川メディアハウス)、「地球が危ない」(共著:幻冬舎)など。 ドキュメンタリー映画『ビューティフル アイランズ』劇場公開を記念して企画・制作したiPhoneアプリ「水没カメラ」が無料アプリ・エンターテイメント部門で第1位の座を獲得。なみある?EARTHアワード2010受賞。

ビューティフル アイランズ 
〜気候変動 沈む島の記憶〜 水没カメラ

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