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夏至南風、駆ける!帆掛けサバニの魅力

沖縄の梅雨が明けると1ヶ月ほど、沖縄の言葉でカーチバイという南西の風が昼夜を問わず吹き続ける。漢字で書くと、夏至南風、沖縄の人にとってまさに夏の到来を告げる南風として知られている。このカーチバイが吹く理由は簡単で、6月のはじめに沖縄にある梅雨前線が九州のほうに本格的に上がり、その梅雨前線に向かって風が吹き込むわけで、本州が梅雨明けすると、このカーチバイもお終いとなる。

この風を使って、沖縄では今年で12回目となる座間味から沖縄本島まで36キロの「サバニ帆漕レース」がある。サバニは古くから沖縄地方で使われている漁船で、帆をかけて走るので帆掛けサバニとも呼ばれている。帆掛けサバニは、風の力と、独特の形状をしたエークと呼ばれる櫂で漕いだり、帆漕時には舵(かじ)としても利用する。このサバニは、戦後FRPの復旧と漁業スタイルの変化によって急激に減少してしまい、合わせてフーと呼ばれる帆とエークを使う伝統的なサバニの帆漕技法もまた失われつつあったが、12年前よりサバニ帆漕レースによって、再び注目を浴び、徐々にサバニ帆漕ファンが増えている。 川ガキの写真など、大自然をフィールドにしている写真家の村山嘉昭もまた、サバニ帆漕ファンになった一人だ。

「はじめてサバニ帆漕レースを取材したのが2007年、ちょうどスポンサーがオメガからへリー・ハンセンに代わったときで、初めて生の帆掛けサバニを見ました。帆掛けサバニのレースも知っていたし、帆掛けサバニがあることも知っていた。でも、ぼくは川の人間だということで、興味はあったけど直接見に行こうということはなかったけど、それを見て、あまりにもかっこよくて、ぼくもやってみたいなと思いましたね」。

その秋、サバニ帆漕レースでもいつも上位チームに入賞している海想が、サバニに乗って無人島へ行こうというサバニ・キャンプを企画した。それをホームページで見つけた村山嘉昭はさっそく申し込み、記念すべきお客さま第1号になった。レースが終わるといつもカーチバイを利用して旅に出かけていた海想の森さんと親しくなった彼は、翌年のサバニ・トリップに誘われる。

「沖縄の粟国(あぐに)から伊江島へ行って、伊是名(いぜな)へ行って本部(もとぶ)に帰るというコースに参加させてもらいました。無人島へちょこっと行くんじゃなくて、本格的なサバニ・トリップで、病みつきになりましたね」。

夏至南風、駆ける!帆掛けサバニの魅力

続けて、彼は次のように言う。 「ぼく自身の興味の対象が記録したいという思いがすごく強いのと、サバニのことを調べれば調べるほど、川ガキと一緒で絶滅危惧種なんですよ。木造のエンジン・サバニもすでに貴重ですが、どこそこの漁港にサバニがあるというのを聞いたら、写真を撮りに行ったりとか、サバニ漁師さんを撮影しに行ったりしはじめました」。

サバニは大木を刳り貫いた丸木舟がルーツといわれ、18世紀前半には杉板を組み合わせる造船技術が確立し、琉球王朝が造船を奨励したといわれている。現在でもサバニは作られているが、サバニ同様、サバニを作る船大工も高齢化と減少により、絶滅危惧種となっている。基本的にサバニは刳り貫いた分厚い木を船底に使っているが、船大工によってそれぞれデザインが違うという。材料の杉は、木造船用に育てられた軽い日南地方の飫肥杉(おびすぎ)が使われている。

今回は8.5メートルのサバニを作ってもらったんだけど、それはたくさんの人(7人乗り)が乗れるようにしたからで、長さもそれぞれあります。サバニは漁をする船だから、漁をする形態によって長さが異なり、たとえば一人で漁をする人はそんなに長いサバニはいらないわけだから、4メートルのサバニもあったし、5メートルのサバニもあります」。

2009年、海想の森さんたちのグループは、石垣島の船大工、新城康弘氏に頼んで、全長8.5メートルの大型のサバニを造船してもらう。この船の名前は指南広義。これは1708年に程順則が書いた航海術の本の名前からとった。

「程順則は名護の出身だったそうで、今回サバニを発注した友人が名護の人だったんで、名護に因んでこの名前を付けました」。

一昨年は沖縄から奄美大島まで220キロの旅をしている。そして、昨年は日本最西端の与那国から沖縄まで700キロの帆掛けサバニ旅に挑戦している。村山嘉昭は帆掛けサバニの旅の魅力を次のように語る。

夏至南風、駆ける!帆掛けサバニの魅力

「ハワイのホクレア号とは違って、この帆掛けサバニの旅はただ楽しいからやっているのであって、スター・ナビゲーションをしようとは思わないし、やはり安全に、使えるものはGPSとか衛星電話など使って航海をする。与那国をスタートとしたのは、ただワクワクするじゃないですか。基本的には、僕らは楽しいからやっているんです」。

また、サバニで旅をする理由がほかにもあった。 「サバニ旅のいいところは、島へ着くとどこでも留めさせてくれるし、漁師さんたちもみんなサバニに興味があるから、近寄ってきてどこから来たんだとか、すぐに親しくなっちゃうところですかね」。

帆掛けサバニ旅は、その日走らなければいけない距離に応じて、日の出前に出港したりしているが、基本的には早朝に行動している。食料は2〜3食分、米とパスタで、残りの食材は島に着いてから調達する。島ではほとんどがキャンプ、ときにはその島の人たちのご好意で民家に泊めてもらえることもあるという。もちろん、航海中はおにぎりやパンをかじりながら、漕ぎ続けなければいけない区間もある。一昨年の沖縄から奄美大島まで220キロの旅では夜間走行を敢行し、およそ20時間で走破している。

昨年、挑戦した帆掛けサバニ旅は沖縄には辿り着けなかった。池間島から久米島間の250キロが問題となり、海上保安庁から航海中止命令が出されたからだ。

「船舶法では、サバニはヨットと同じ船だから、動力がない船は船検を受けなくても良いんだけど、20海里を出るときは船検を受けなければいけないんだって。船検は、車検みたいなもので、20海里を出るための装備をしているとかを調べるもので、たとえば、サバニを、船検を通そうとしたら、蓋を付けて救命胴着を装備してということになると、2人だったら行けるけど、8人乗れないんですよ。別の船になっちゃいますね」。

今年、昨年のトラブルにめげずに帆掛けサバニ「指南広義」号は沖縄から宮崎を目指す旅を計画している。

「去年悔しかったから、今年はもっと楽しいことをしようって、じゃあ(とから)へ行こうってことになり、もっと遠い宮崎を目指そうということになったんです」。

南国の海とひとつになって琉球の伝統的帆漕技法を学び、島それぞれが持つ個性豊かな自然と独自の文化をひとつひとつ堪能する帆掛けサバニ旅。 島に着けば、 地元島民たちの心を掴み、交流を深める完璧なツール、サバニがある。 沖縄地方の夏を告げる季節風、カーチバイを利用しながら島から島へと自由気ままな風まかせの帆掛けサバニ旅は、 まさに今考えられる最高にぜいたくな旅のスタイルといっていいのだろう。

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