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毒物を吐き出す動作が社交上の笑いに進化した。  笑いの研究には、顔の表情からアプローチする試みも行われている。さまざまな笑い方にはそれぞれルーツや意味があり、引き起こすメカニズムも顔の表情も異なっていると、精神生理学者の志水彰は「人はなぜ笑うのか」で書いている。  たとえば、嫌いな上司に会ってもにっこりと微笑んだり、欲しくもないプレゼントをもらっても笑顔でお礼をいうような「社交上の笑い」は、動物が誤って口の中に入れた毒物を吐き出す動作が進化したものと考えられているという。  笑いは顔の表情の一つであり、表情はコミュニケーションの重要な手段となっている。人間の顔の表情のルーツを調べることによって、なぜ人間は笑うのかという笑いのルーツを発見しようという研究だ。  口のなかに入った有害なものを吐き出そうとするとき、ほ乳動物は口を横に広げて口角を後ろに引き、歯を出し、舌を突き出す。このとき、高い叫び声をあげることが多いが、それは有害なものが吸い込まれないように声門を閉じ、呼吸を止めた後、急いで強く吐き出すためであるという。  この一連の動作は、本来有害なものから身を守る防御反応である。しかし霊長類では、叫び声などの動作がなくなり、歯をむき出す動作だけが残り、やがて危険伝達、防御のシグナルとして表現するようになり、さらに進化して弱い立場の猿が「こびる表情」として「服従の笑い」が生まれ、ついには人間の「あいさつの笑い」に発展したというものだ。 ダーウィン説による笑いの起源。  「笑う脳/茂木健一郎」によると、チャールズ・ダーウィンの「偽の警告仮説」では、笑いは、動物が群れをなして生活するなかで、仲間同士のコミュニケーションの必要性から生まれたものだとしている。  たとえば、群れに外敵が攻めてきたとき、それを発見した一匹が仲間に危険を知らせる警告の叫び声をあげる。しかし、外敵が去ったり、またはそれがうそだとわかった瞬間に、仲間の緊張を解くためにニヤッと顔の筋肉を弛緩させた表情を見せる。こうして、敵はいないよ、安全だよと知らせ、仲間たちの緊張と不安を和らげてあげるためのサインが、笑いの起源だというものだ。  いずれ、笑いの起源は、集団生活や社会性=コミュニケーション と強く結びついているのは間違いないようである。