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 笑うことは人間だけに与えられた特権だ。最近、笑うアシカや笑う犬など、笑う動物たちの動画がユーチューブにアップされ話題になっているが、彼らは楽しくて笑っているわけではない。写真を撮るときに、「はい、チーズ!」と言って笑顔を作るように、笑っているように見えるだけなのだ。本当に笑うことができるのは、高度な知能を持つヒトさまの、精神と生理を結ぶ複雑な意識現象といえる。  ヒトはいったいなぜ笑うのだろうか? 脳科学者によると、人間が笑うプロセスはいまだ解明されていない領域なのだそうだ。  「現代の脳科学の知見でも、『人間はなぜ笑うのか?』の答えは用意されていない。笑いのメカニズムの全容は解明されずにいる。笑いはいまだに神の領域に属しているのだ」(笑う脳/茂木健一郎著・アスキー新書) 人間だけが笑う動物である。  アリストテレス  古来、笑いとは何かという大命題に哲学者や宗教学者たちは頭を悩ましてきた。旧約聖書に、「神はアブラハムに、産まれてくる子どもにイサク(笑う)と名付けなさい」という一節が書かれている。キリスト教では、「笑い」は神から与えられた贈り物なのである。かのアリストテレスは、「人間だけが笑う動物である(動物論/アリストテレス全集・岩波書店)」と宣(のたま)ったが、以来、人類は大変な宿題を背負わされてしまった。  ユーモアという言葉の語源はラテン語のフーモル(体液)だが、これは、笑いは体液によって起こされるという中世西洋医学の解釈からきていた。そのもとになったのが、ギリシャの医学者ヒポクラテスが唱えた体液説だが、それによると、血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁の4つの体液の優劣でヒトの気質が決まるとされた。その体液の意味が薄れていき、ユーモア=おかしさが残ったという。